
建設省建設経済局宅地企画室監修土地有効利用研究会編
(ダイヤモンド社)を参考にして
土地信託とは、土地を有効利用し収益をあげる目的で、土地所有者等地権者(委託者)が受託者に土地を信託し、受託者が所要資金の調達、建物の建設、建物の賃貸保守管理、テナントの管理ないし契約の更新等を行い、その管理運用等の成果を信託配当として受益者に(委託者たる地権者)に交付するものです。
土地信託は賃貸型と処分(分譲)型に大別できます。
分譲型は受託者が所有権を売却して信託財産から分離し、同時にその売却代金を受益者に信託配当として交付します。
本稿においては、賃貸型について説明します。
複数の地権者が一団の土地を信託して、受託者がこれを一体画地として運用する仕組みとしては、次のものが考えられる。

(注)信託行為や信託財産が複数の場合も考えられるが、「信託行為・信託財産がともに一つ」が原型とする従来の考え方に鑑み上図とした。しかし、集団型信託や追加型信託の場合当然信託行為が複数とする考えは、現実および当事者の意思とは一致しない。これは民事信託の継続反復を誤解した考えである。このことに関しては詳しく後述する。
各地権者が単独所有の土地(分有)を信託し、受託者がこれら一団の土地を一体画地として運用する。
この分有方式については、「信託行為」と「信託財産」の数をどう構成するかの点から、さら以下の3つの仕組みが考えられる。
複数の地権者が1つの信託行為で土地を信託し、これらの土地が1つの信託財産を組成する場合(単一行為方式)。

複数の地権者が各々別個の信託行為によりそれぞれの土地を信託し、各土地は個別に信託財産を組成するが、受託者がこれらの土地を一画地として運用する場合(複数方式―複数財産方式)。

複数の地権者が各々別個の信託行為によりそれぞれの土地等を信託するが、これらの土地等が1つの信託財産を組成する場合(複数行為―単一財産方式)。

複数の地権者が地権者組合を組織し土地を組合に出資し、当該組合が1つの信託行為で1つの信託財産を組成する場合。

(注)民法上の組合の場合、組合財産は総組合員の共有となり(民法668条)、商法上の匿名組合(商法535条)の場合営業者の財産に属することになるので(同536条)、この方式は譲渡益課税、不動産取得税および登録免許税等の流通税の問題がある。
共有化方式と組合介在方式が可能であることについては異論がない。
分有方式の可否を定めるには、次のAからEを検討する必要がある。
信託行為には「所有権を委託者から受託者へ移転する」という物権的処分行為がある。
「各地権者は、自分の持っている土地等についてだけ処分(所有権の移転)できるのであり、他の地権者のもつ土地等について処分する権能は有していない」と考え、また、他方で、「処分行為としての側面なくしては信託行為はありえず、信託行為はそれを構成する処分行為単位で成立するから、複数の処分行為の上に1つの信託行為が成立することはありえない」と考えると、「複数地権者が各々所有する単独所有地(分有地)を信託する場合には、地権者の数だけ信託行為が成立するのであり、1つの信託行為となることはありえないのではないか」との疑問が生じる。
複数の信託行為で1つの信託財産を組成しうるか。
信託行為によって信託財産が設定されるのであるから、通常は信託行為ごとに信託財産が成立する。
そこで、別々の信託行為によって1つの信託財産を設定することが、可能かどうか検討する必要がある。特に新しく参加してくる地権者の追加信託財産。
別個の信託財産に属する土地を一体画地として運用することは、「信託財産分別管理義務」に違反しないか。
複数の地権者から受託した土地を一体画地として運用することは、「忠実義務」に違反しないか。
委託者全員が受託会社の株主であり、取締役も委託者と同一である。
委託者(地権者)の間には、一団の土地を一体画地として運用するという「共同利用」の意思があり、そのことは信託目的にも明示されているのだから、A乃至Dについてはいずれも可能であり、受託者の義務違反等の問題は生じない。
Eについては、旧法上信託宣言が禁止された実質的理由は、(1)自己の財産を目的財産とすることによって債権者を害する恐れがあること、(2)法律関係が不明確になること、(3)義務履行が不完全になりやすいこと(四宮和夫信託法新版84項)、に抵触しないかという観点から検討する必要がある。本件は単独行為による信託宣言(自己信託)とは異なり、受託会社は全ての地権者が出資して設立した会社であり多数当事者間の権利義務の関係に該当する。すなわち、地権者Aは他の地権者全員に対して受託行為の履行について請求権及び監督権を有しており、A以外の地権者も他の地権者に対して同様の権利義務を有している。すなわち、受託会社は全ての地権者に対して同様に義務を負っており,義務履行者と権利者とは完全には一致しない。よって、信託宣言及び自己信託には該当しない。
一方、民事信託の場合、受託者の責任能力が問われるが、「たとえば、友人間でお金を出し合って、投資等を行った場合を考えてみよう。このとき、集団投資スキームに関する法規制、少なくとも受託者責任の賦課という規律が及ばないのは異論のないところであろう。これは、その投資対象の選択、売却等の処分の時期などについて、各投資家が直接のコントロールを行っているという点に特徴がある。」(集団スキームに関するワーキンググループ東京大学道垣内弘人)。いわゆる共同事業における民事信託の場合、極端に言えば信託財産の公示性、分別管理の明示が行われていれば狭義の受動型信託でも当該法人は根拠法に基づく法人格を持ち全ての信託行為に関し行為能力があるものと解する。