当初一画地として計画していた共同ビルが区画整理によって2街区に分かれてしまい、ツインビルとなったケース。
当然土地はそれぞれ分有でありそれぞれに建設するビルのテナントの賃料、入居率等が異なれば配当も異なる。よって、下図のようにそれぞれの土地に地権者の事業シェアごとに定期借地権を設定しかつ定期借地権を信託財産(全地権者が両街区の自益信託権者となる)として受益権に質権を設定することで各地権者の既存の抵当権を抹消し、当該信託された定期借地権の安全を図ったケースである。勿論、両街区の建物は分別管理をするのは当然であるが(減価償却等)、信託配当は両街区合わせての信託配当とすることが共同事業者の意志に合致している。
A街区及びB街区ともに区分所有建物の定期借地権の敷地権とする。
敷地権化することによって建物と敷地権(定期借地権)が一体化する(借地権と建物とを分離して処分することができない)。以下、A街区、B街区ともに共通
今後、自益信託(昭和61年土地信託通達参照)とするために、土地が分有の場合、定期借地権を設定しそれを信託とするケースが増えると考える。
分有の土地上に土地所有者以外の者が受益権を取得(他益信託)することも考えられるが、昭和61年土地信託通達では、当該他益信託受益権の売買を不動産の売買とはみなしていない(事業用資産の買換特例等の否認)。
(注)昭和61年通達は平成18年の信託法の施行と同時に廃止されました。今後は個別相談となります。
受託者:有限会社立川みなみルネッサンス(地権者全員で出資設立した法人)
受益権には建物を竣工する権利と義務が地権者相互に包含されています。銀行がPFを融資実行する担保としては信託財産となったRからの土地担保のみでは建物竣工に関する権利義務が包含されていないので全地権者からの定借の受益権も建物竣工までは担保に取る必要があります。建物竣工後は建物に対して(根)抵当権を設定するので全地権者に対するPFに関する質権は抹消し、個別融資のない地権者に関しては受益権証書も返還します。
本件プロジェクトの定期借地権は法定地上権です。よって、定期借地権を敷地権としなければ底地と建物を競売しても法律上は定期借地権のみが残ることになります。定期借地権を敷地権化することによって建物の競売イコール定期借地権も一括して競売されることになります。勿論信託財産の処分(競売・任意売却)によって信託も解除されます。
(注)定借を地上権とすれば抵当権の効力が地上権に及ぶので敷地権とする必要はありません。
1. 土地が分有でその上に共有の建物を建て全体に対して担保を設定した場合
土地が分有の場合、第三者から競売、仮差押え等さまざまな権利の行使が可能です。
2. 分有の土地の上に定期借地権を設定して当該賃借権を信託した場合
信託財産であるのでそれが阻止できます。
信託のライセンスのない民事信託の場合、信託業法上の継続反復違反(地権者が共有で取得した定期借地権信託の外にプロジェクトファイナンスを融資してもらうための底地権の信託等)についてよく批判を受ける。委託者(地権者)の間には、一団の土地を一体画地として運用するという「共同利用」の意思があり、そのことは信託目的にも明示されており、これは複数地権者が一つの事業を達成させるための手段であり目的は一つである。このような批判は共同事業遂行という一個の目的的行為を理解しないことからくる誤解である。
地権者全員が一時に信託行為をしなくとも、地権者が多い場合や事業に合意した者から順次信託してもこれを一つの信託行為ととらえて理解するのが素直である。
また、地権者相互の意志が強固であり、一人が欠けても事業が成立しない場合には、委託者のうち一人でもその意志が無効で有れば信託全体が無効と解するのが合理的である。この点でも「1つの信託行為・共同信託」と構成する方がわかりやすい。実務上も共有地と分有地の場合とを敢えて区別する意義を見出しがたい。前述したように、プロジェクトファイナンスを得るために信託した定期借地権に対する質権設定だけでは担保価格が不足で有れば、底地も担保に入れる必要がある。将来の担保の付け替え等を考えると信託にするのが安全である。
A街区とB街区を一体として運営し地権者全員に両街区から配当するために定期借地権を設定し建物も共有としましたが、信託配当を全員に配当するためだけであれば両街区が一個の信託財産であれば定期借地権を設定する必要はありません。ただし、将来どちらかが競売にかかった場合配当を受けられない地権者が出てくることを考えた場合定期借地権が優れていると考えます。